19.僕じゃダメかな?

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 大葉(たいよう)はそんな岳斗(がくと)をじっと見据えると、 「お前、柚子(ゆず)が俺の姉だって知ってたはずだよな? なのに……何でわざわざ(ガセ)の情報を流して羽理(うり)を不安にさせた?」  岳斗(がくと)大葉(たいよう)がまだ財務経理課長をしていた頃、柚子が土恵(つちけい)商事に顔を出したところに居合わせたことがある。  今更しらばっくれるのはおかしいだろ?と言外に(ほの)めかせつつ、さっき羽理から聞いた言葉でそこが引っかかったのだと大葉(たいよう)が言えば、「何だ、そんなことでしたか」と岳斗が何でもない風に吐息を落とした。 「分かりませんか? 僕が吹き込んだデマでお二人の仲が(こじ)れて、あわよくば別れてしまえばいいのに、と思ったからですよ」 「そんなくだらない理由で……お前は羽理を傷付けたのか?」 「うーん、僕としては羽理ちゃんを傷付ける気はなかったんですけど……。まぁ結果的にはそうなっちゃいましたね」  だからこその意味も込めてケーキを買ってきたのだと――。  岳斗が悪びれた様子もなくそんなセリフを付け加えた途端、大葉(たいよう)は岳斗の胸ぐらを掴んでいた。  そのままグイッと腕を引くようにして岳斗の方へ身を乗り出すと、 「どんな理由があろーとアイツを傷付けて平気なやつに、羽理は渡さねぇよ。――しっかり覚えとけ、サイテー野郎」  岳斗の耳元でそう牽制(けんせい)して、スッと離れた。
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