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「……大葉?」
「んー? 着替えたか?」
上のパーカーはそのままに、長ズボンに履き替えてきた羽理を見て、大葉が満足げに微笑んだ。
だが、羽理は大葉とは対照的に困惑顔のまま。
「あ、あの……。今、倍相課長とすっごく、すっごく! くっ付いてなかったですか……?」
「あー、見られちまったか。ま、気にするな。羽理には内緒で男同士のイケナイ話をしてただけだから。――そうだよな? 倍相」
「はい。〝大葉さん〟と、ドキドキするような時間を共有していただけです」
どこか上気したような色っぽい顔で、岳斗が大葉をうっとりと見つめるから。
羽理は何だか余計にそわそわしてしまう。
(ちょっ、もしかしてコレ。『皆星』で連載中の、『あ〜ん、課長っ♥ こんなところでそんなっ♥』のヒロインのライバル役を男性に置き換えなきゃいけないんじゃないの!?)
なんてことを思ってしまうような……そんな雰囲気なのだ。
(大葉にその気がなさそうなのがせめてもの救いだけど)
これで大葉にまでそんな雰囲気を醸し出されてしまったら、羽理の立つ瀬がない。
***
まさか羽理にBL展開を心配されているだなんてこれっぽちも思っていない大葉は、急に岳斗から「大葉さん」だなんて呼ばれて、ポーカーフェイスのまま実はゾワリと全身に鳥肌を立てていた。
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