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大葉の、本気の脅しがきいたんだろうか。
あのやり取りの後、岳斗はやけにあっさりと立ち上がって。
「じゃあ、僕、そろそろ帰りますね」
そう言ってどこか憂いを帯びた表情で微笑んだ。
そうして玄関を出る間際、「あのっ! い、色々ありましたけど……僕は大葉さんに敵意はありませんのでそこだけは誤解しないで頂きたいです。それから……お役に立てるかどうかは分かりませんが、困ったことがあったらいつでも相談して下さい。お力添えいたします。……あ、もちろん羽理ちゃんも」と、まるで取って付けたように今までは最優先事項だったはずの羽理へ愛想笑いをするから。
後に残された羽理とふたり。
大葉は岳斗の余りの変わり身に戸惑わずにはいられなかったのだが。
「うー。何だかモヤッとします。倍相課長ってば、まるで大葉に恋しちゃってるみたいなんですもん」
羽理が唇を尖らせてポツンとそんなことを言うから、思わず「はぁっ!?」と素っ頓狂な声を上げてしまっていた。
「い、いや……どう考えてもそりゃねぇだろ」
大葉の言葉に、羽理は「え? ありますよ! あの表情は絶対フォーリンラブですもん! 気付けなかったとしたら……大葉が鈍すぎるからです!」とか。
「いや、お前がそれを言うか!?」
今まで散々頑張ってきた自分のアプローチを羽理に袖にされまくってきた大葉が、思わずそう返したのも無理はない。
(そもそも男同士でそんな……。俺もアイツもノーマルだぞ!?)
つい今し方まで自分と岳斗が、羽理を巡って火花バチバチだったことを、羽理だって知っているだろうに。
大葉は、何をバカげたことを……と、思わずにはいられなかった。
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