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(抱かせ、て……?)
聞き間違いでなければ、いま、目の前にいる大葉からそんな問い掛けをされた気がする。
羽理は、こちらへ切なげな眼差しを向けたままスリスリと自分の耳たぶに触れ続けている大葉を、戸惑いに揺れる瞳で見上げた。
触れられている耳が馬鹿みたいに熱を持っているのを感じる。
「あ、あの……抱かせて……って……えっと……抱っこのことですか? だとしたらもう……」
羽理は大葉の腕の中だ。
これは俗に〝抱っこ〟と言うのではないだろうか?
自分でも違う意味だと分かっていながらも恐る恐る尋ねたら、大葉が瞳を見開いた。
「えっと……それも……含まれる、かな」
ややしてどう告げたらいいのか迷うみたいにそう言ってから、大葉が羽理の後頭部に大きな手のひらを宛てがってくる。
「ひゃっ、あ、あの、大葉……?」
――その手は何ですか?
そう聞こうとした矢先、言葉を紡ごうとしていた羽理の唇は呆気なく大葉に塞がれていた。
「ぁ、……んんっ!」
なまじ口を開けていたから、当然のようにそこから大葉の舌の侵入を許してしまって。
さっき経験したばかりの大人のキスの再来に、羽理はキャパオーバーを感じて懸命に仰け反って逃げようとしたのだけれど。
(え、うそっ……!?)
大葉が頭へ添えた大きな手に、ガッツリ動きを封じられてしまっていることに気が付いた。
(もしかしてそのため、……だったの?)
今更そんなことに気付いても後の祭り。
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