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(今のセリフ。やっぱり彼女、俺が勃てちまってたところを見たってことだよな!? マジかぁぁぁ!)
そう気が付いたら、『こんな可愛い子に嘘だろ!?』と叫び出したいような気恥ずかしさと情けなさに、机へ突っ伏したくなった大葉だ。
だが。
そうしたところで現状を打開出来るわけではない。
長く社会人をしていれば、いま目の前にいる彼女みたいに、本筋とはひどくかけ離れた突拍子もないことを言ってくる人間と言うものは少なからず存在する。
そういう不思議人種の軌道修正をさり気なく行うことも、上に立つ人間には必要不可欠なスキルだ。
大葉は動揺してしまった自分を落ち着けるため、一度姿勢を正すと、「バカなことを言ってないでさっさと座れ」と、打ち上げられた破廉恥な質問をあえて黙殺する。
大葉の言葉に、今度こそ渋々と言った調子で従ってくれた女性に、「キミは俺のことを知っているようだが、俺はキミのことを知らない。申し訳ないが、まずは名前を教えてくれないか?」と、ごくごく当たり障りのない部分から攻めることにした。
***
羽理にだって、妙なことを口走ってしまったという自覚はある。
だから、屋久蓑大葉の、全身全霊を掛けたみたいな「はぁ!?」には正直ひるみそうになった。
でも――。
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