20.お願い、抱かせて?*

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羽理(うり)」  大葉(たいよう)が、羽理の上に覆い被さるみたいに四つん這いになって、羽理の名を呼んでいる。  それでも羽理は大葉(たいよう)の方を見られなくて。 「な、頼むからこっち向けよ」  照れくさいのはお互い様だと付け加えながら、大葉(たいよう)がそんなことを言ってくるから。 (照れくさいとか絶対嘘だ)  何の根拠もなくそう思った羽理だったけれど、恐る恐る見上げた大葉(たいよう)の表情が、どこかぎこちなくてびっくりしてしまう。 「大葉(たいよう)?」  思わず大葉(たいよう)の頬へ手を伸ばしたら、その手を掴まれて指先にチュッとキスをされてしまった。 「ひゃっ」  咄嗟(とっさ)のことにキュッと手指を縮こまらせた羽理だったけれど。 「大事に……するから」  手を握られたまま真摯(しんし)な目を向けられた羽理は、(ああ、私、このままこの人とんだ)と今更のように実感した。 「は、初めてなので……お手柔らかにお願いします。あと……私、その……こんなことになるなんて思ってなかったから、えっと全然、その……色々準備とかしてなくて」 「準備?」  大葉(たいよう)がキョトンとして羽理を見詰めてくるから、「ほ、ほらっ。にゅ、入籍とか……そう言うのを済ませてからでないと、その……あ、赤ちゃんとか……出来るようなことしたらダメかなって思って……。なのに私、の用意が全然なくて」  この()に及んで学生の頃の彼氏にフラれたのと同じ理由を述べた上で「え、縁がなかったから……」と付け加えれば、 「バーカ。心配しなくても俺がしっかり考えてる。でなきゃ最初(はな)から手なんか出そうとするかよ」  言うなり大葉(たいよう)の顔が近付いて来て、羽理はギュッと目をつぶった。
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