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大葉の言葉をオウム返しした羽理に、「なら、今度からは十個入りを買うようにしよう」と、大葉が意地悪く付け加えてくるから。
羽理はきゅぅっと眉根を寄せた。
「そ、そんなっ。いっ、一回でじゅ、うぶん……です」
(多分……!)
したことがないから、実際のところ羽理には一回と六回の間にどれほどの差があるのか分かっていない。
分かりはしないけれど……。
恐らく一回だって大変なことに違いないのだ。
「遠慮するな」
だって、そう言ってニヤリと微笑んだ大葉の顔を見たら、そうとしか思えなかったから。
「え、遠慮なんてしてません!」
慌ててそう言い募ってから、羽理は大葉をじっと見上げる。
「大葉、私が……初心者だってこと、忘れてない?」
泣きそうになりながらそう問いかけた。
***
羽理にうるんっと潤んだ黒目がちなアーモンドアイで見上げられた大葉は、そのパンチ力に心臓を鷲掴みにされた。
いま手元にある一個と、真新しい五個入りパッケージを開封したとして六回。
つい羽理に意地悪したくてそんな回数を提示してみた大葉だったのだけれど。
実際問題今までの彼女たちとは一晩で一回が主流だったし、まぁ興が乗ってもせいぜい二回が関の山。
〝六回〟は当然冗談のつもりだったのだ。
だが――。
(マジで次からは十個入り買っとこ……)
とか思ってしまった。
三十路も半ばを越えてこんなに〝したい!〟と思うような状況になれるだなんて、正直自分でも驚きだ。
でも、羽理が相手なら何回出しても出し足りない気がしてしまう。
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