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自分も真っ裸で準備なしは心底びっくりしたけれど、裸を見られたのはある意味好都合。
目の前の屋久蓑大葉は、まさに飛んで火に入る夏の虫。
罠にかかったからにはとことん色々取材させてもらうんだからね!?とか思っていたりする。
そのための質問を無残にもつぶされたことにガッカリしながら、ぼそりとつぶやくように「荒木羽理です」と口早に名乗ったら、聞き取れなかったのだろうか。
屋久蓑部長が「……あらキュウリ?」とバカなことを言ってくる。
「それは……さっきのぶっ飛び質問への報復ですか?」
ジロリと真正面から睨んだら、「バカ! んなわけねぇだろ。っていうか、とんでもない質問をしたっていう自覚はあったのか。……驚きだな。お前ホント、どういう感性をしてるんだよ!」とか。
(ば、バカって言った……! 変態裸男の癖に……)
羽理の頭の中、もう一人の羽理が『可愛げのないことを言う人には三毛ちゃんタオルは貸しません!』とか何とか言いながら、屋久蓑部長が腰に巻いたタオルを奪い返す構図が浮かんで。
(いやいやいや。さすがにそれはダメでしょ)
そんなことをしたら痴女決定になってしまう。
「ア・ラ・キ・ウ・リです! キュウリではありません!」
羽理は、小学生の頃屋久蓑部長みたいなアホな男子から「あら、キュウリぃ~!」と揶揄われて、以降高校へ行くまであだ名がキュウリだったのを苦々しく思い出していた。
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