22.朝チュンではないけれど

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 バナナの皮をむくみたいに被った布団をめくって痛みに震える羽理(うり)の顔を中からみれば、額のところが赤くなってちょっぴり腫れている。 「頭、打ちましたぁぁぁ」  うるりと瞳に涙をにじませて、布団にくるまったまま自分を見上げてくる羽理に、大葉(たいよう)は心臓をズキュン!と撃ち抜かれて。 (俺の彼女、可愛すぎだろ!)  昨夜こんな可愛いのを〝頂いた〟んだと思うと、何となくイケナイことをしたような気持ちに(さいな)まれて心臓がバクバクする。 「痛いの痛いの飛んでいけー!」  いつだったか、公園で羽理に股間を撫でさすられながらそんなことを言われたことがあったのを思い出しつつ羽理の頭をヨシヨシしたら「むぅー。私、子供じゃありませんよぅ!」とか。 「いや、お前もこれ、俺にやったことあるぞ?」  つい本音がポロリ。 「あ、アレは忘れてください! 忘れるべきですっ! 忘れてしまえー!」  結果、羽理と二人、あの時のことを思い出して妙に気恥ずかしくなってしまった。 「とっ、とにかくっ! 俺はお前のことを子供だなんてこれっぽっちも思ってねぇからな?」  そう思えないから大変なんじゃないか、と心の中。フライ返しを手にしたままの間抜けな姿で付け加えつつ。  今だって腕の中の羽理は布団の中で素っ裸なのだと知っているから……布の隙間から見え隠れする胸の膨らみに、大葉(たいよう)は〝愚息〟をなだめるので一杯一杯なのだ。
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