22.朝チュンではないけれど

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 さっき羽理(うり)の様子を見に行っているとき焼いていた玉子は、ちょっと固焼きになり過ぎていたから。  それは自分が食べることにして、新たに羽理用の卵液をかき混ぜていた大葉(たいよう)だったのだけれど。  明らかに情事の後遺症にしか見えない、左右に揺れまくりのペンギン歩きをする羽理に、思わず手が止まってしまう。 『羽理、もしかして身体に違和感でもあるのか?』  だなんて、ド・ストレートに聞いていいものかどうか……。  何せ処女を抱いたのは大葉(たいよう)にとっても初体験。  というよりそもそも女性経験自体が。  いや、もっと言うと過去に関係を持った女性の人数自体が。  年上の元カノ二人こっきりと、年齢の割に少ない大葉(たいよう)としては、辛そうな羽理をどう(いた)わったらいいのか全く分からないのだ。   「ひょ、ひょっとして……歩くの、辛い……の、か?」  結局迷った末、大葉(たいよう)は割と見たままの問いかけをしてしまって――。  一瞬だけ瞳を大きく見開いた羽理から「な、何かっ、……まだ足の間に大葉(たいよう)のが挟まってる感じがするんですよぅっ!」と、こちらからも包み隠さない感想を述べられてしまう。  その余りに生々しい告白に、大葉(たいよう)は卵液を入れたボールを持つ手元が狂ってしまった。 「わわっ」  ぐらりと揺れたボールの端から、トローン……と卵液が一筋、床に流れ落ちて。  大葉(たいよう)は慌てて体勢を立て直すと、ボールをシステムキッチンのワークトップへ置いた。  先の羽理からの赤裸々告白に、大葉(たいよう)がどう返したらいいか戸惑いながら床の卵をティッシュで拭いていたら、羽理が恐る恐ると言った調子で声を掛けてくる。
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