22.朝チュンではないけれど

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「あ、あの……私っ。今日は……その……お、お仕事……お休みしてもいい、でしょう……か?」 ***  今日はどう考えてもマトモに歩けそうにない。  股の辺りの違和感もさることながら、とにかく腰にきている。  一歩一歩足を踏み出すたびにズキズキと腰が悲鳴を上げて、家の中を移動するだけでも一苦労だったのだ。  羽理(うり)はギュウッと胸前で両手を握り締めて、大葉(たいよう)の出方を待った。  と――。  大葉(たいよう)が口を開くより先。  しんと静まり返った部屋の中に、ブー、ブーッという振動音が微かに響いて。  羽理はベッド(わき)で充電器に差しっぱなしにしていた携帯電話が鳴っているのだと気が付いた。  メールならブブッと短く二回振動するだけだが、長く鳴り続けているところを見ると、どうやら音声通話着信のようで。 「ごめんなさい、大葉(たいよう)。電話が……」  言って、寝室へ向かおうと身体の向きをほんのちょっぴり変えた羽理だったのだけれど。 「ひゃぅっ!」  その途端、足の付け根の筋肉痛がピキッとなって、それを(かば)うように変な動きをしたら、腰にズキン!と激痛が走った。余りの痛さに、羽理は思わず壁に手を付いて動きを止める。 「大丈夫か!?」  そのまま壁をこするようにしてズリズリとうずくまってしまった羽理を見て、大葉(たいよう)がすぐさま手を差し伸べてくれたのだけれど。  羽理は鳴り続けている電話が気になって、そちらへ視線を流した。 「あの、大葉(たいよう)……申し訳ないんだけど私の電話を――」  取って来て欲しい、と告げるまでもなく、大葉(たいよう)はサッと立ち上がって寝室へ向かうと、「法忍(ほうにん)さんからだ。切れないうちに応答だけしといていいか?」と問い掛けてくる。
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