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ノックもなしにドアが開いて、全裸の男が入ってきた。
「――っ‼︎」
人間、驚きすぎると悲鳴も上がらないのだと、荒木羽理は二十五年間生きてきて初めて知った。
浴室の中。
肩より少し長い、やや癖っ毛の栗毛色の髪から、ポタポタと雫が滴り落ちては顔を濡らす。
だけどそれすら頓着出来ないままに、羽理はカチンコチンに固まって眼前の男を見つめ続けた。
何が悲しくて、同じ社内にいるけれど雲上人のようなこの男性と、いきなり何の前振りもなく裸のお付き合いをしなくてはいけないんだろう?
大学三年生の頃、きっちり三ヶ月間お付き合いした人生初の彼氏にだって、見せたことのなかった身体なのに!
ハッと気がついて今更のように剥き出しの胸と股間を手で覆ったけれど、絶対バッチリ見られてしまっているはずだ。
だって――。
(わ、私もしっかり見ちゃったもん! 屋久蓑部長の立派な股間!)
経験値ゼロの羽理に比較対象があるわけではないけれど、めっちゃ大きかった気が致します!……だなんて下衆な感想、断じて抱いておりません!
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