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羽理の冷たい視線にひるんだのかどうなのか。
「アラキ・ウリか。しかし……ウリとはまた珍しい名前だな」
屋久蓑部長がどこか感心したようにつぶやいて。
羽理はその言葉にすかさず反撃を試みる。
「大葉って書いて大葉って読ませる人に言われたくありません」
以前社内報を読んでいて、『タイヨウという響きは素敵なのに、漢字!』と思ったのを羽理は鮮明に覚えているのだ。
何だか自分だけ蚊帳の外みたいに人の名前のことをおっしゃってますけど、うちの親と部長の親御さん、割と同類だと思います!と心の中で付け加えてみる。
だが、親の信じられないセンスのお陰で青果を専門に扱う土恵商事に受かったことを思うと、羽理は複雑な気持ちなのだ。
最終面接で、採用担当者から『野菜の名前が入ってるだなんて、うちの会社にふさわしい人材ですね』とニコニコされたのだけれど、もしかしたらウリの方ではなくキュウリの方をすくい上げられたのかも知れないな?と今更のように気が付いた。
そうして――。
(部長も名前採用の人なのかも?)
ふとそんな親近感を覚えてしまった。
それで生暖かい目で屋久蓑部長のことを見詰めてしまい、「お前、俺のことすげぇ詳しいな。……実はファンか?」とか言われて。
いやいやいや、いきなりどうしてそういう発想になりますかね!?
確かにこうして真ん前に座ってみると物凄く整ったお顔立ちで、さぞやおモテになられるだろうな?とは思う。
思うけれど。
(自意識過剰ですよ!?)
残念ながら羽理には倍相岳斗課長という〝推し〟がいる。
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