22.朝チュンではないけれど

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 大葉(たいよう)はすぐそばで自分を見詰めている羽理(うり)をちらりと見遣ると、画面をササッと服の袖口(そでぐち)で綺麗に(ぬぐ)って、羽理に携帯を差し出した。 *** 「もしもし、仁子(じんこ)?」  大葉(たいよう)から携帯を受け取って、恐る恐る応答したら『もぉー、羽理(うり)ぃー! メッセしても既読スルーだし、電話しても電源切れてるってアナウンスが流れるばっかだし……! 何の音沙汰もないからめっちゃ心配したんだよ!?』と、思わず電話を耳から離さないといけないくらいの大音量でまくし立てられた。 「ごめん! その……寝込んでる間に携帯の電源が落ちてたみたいで」  厳密にはずっと寝込んでいたわけではないが、そこは嘘も方便だ。  そもそも、今日も羽理は〝別の理由〟で仕事に行けるような状態ではないわけで……ゴニョゴニョ……。 「もぉ! しっかりしなさいよね!? ……そういえば、体調はどうなの? 余りにも連絡がつかないから私、昨日の夕方、ちょっとアンタの家、行ってみたのよ?」 「嘘……」 「嘘じゃないわよ。けど、羽理、チャイム鳴らしても出てこなかったでしょ? もしかして病院行ってた? それとも……ひょっとして寝込んでて出らんなかったとか!?」  もし後者だったら申し訳ないことをしたと謝ってくる仁子に、羽理は言葉に詰まった。 「昨日は……その……夕方、たいよ……じゃなくて……えっと、や、屋久蓑(やくみの)部長のお家でお世話になってて……それで――」 「〝大葉(たいよう)〟でいいわよ。さっき部長から二人の関係、聞いちゃったし。そっか、そっか部長の家にねぇー。へぇー、そうかそうかー。その辺もまた詳しく聞かせてもらうからね!?」  と付け足されてから再度。 「で、体調はどうなの?」  そう問いかけられた。
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