22.朝チュンではないけれど

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「……じ、実はちょっと調子が良くなくて……それで……」  昨日は精神的に。今日は肉体的にグダグダなのだと正直に言えない気恥ずかしさが、羽理(うり)の言葉尻を曖昧に鈍らせる。 「色々って何! 朝起きたらまたどこか悪い所が増えてたってこと!? 一晩休んだのに!? 私てっきり昨日は弱って帰ったんだと思ってたのに……違ったの!? もぅ! だったら寝てなきゃダメじゃない! ――って私が電話で起こしちゃったのか。――羽理、ごめん!」 「いや……わ、私の方こそ……何か色々とごめんなさい。ホント……色々と……」 「さっきからやけに色々と、多いわね? 〝色々〟が何かすごく気になるの、私だけ? あー、けど! とりあえず調子悪いなら無理は禁物! 謝らなくていいからしっかり養生なさい。いいわね!?」  そこまで言って、仁子はちょっとだけ黙ってから、小さく息を呑んだ。  そうして――。 「えっと……羽理。悪いんだけどもう一度だけ部長と替わってもらえる? 私、部長に言いたいこと出来たわ! ――羽理は部長に電話渡したらこっちのことは気にせず速やかに寝ること! いいわね!?」  何だかよく分からないけれど、再度大葉(たいよう)に電話を渡すようにまくし立てられてしまう。  羽理は仁子が大葉(たいよう)に何を言うつもりなのか気になりながらも、仁子の勢いに押されるように大葉(たいよう)を呼ばずにはいられなくて。 「あ、あの、大葉(たいよう)! 仁子がまた大葉(たいよう)とお話がしたいって」 「は? 何でだ!?」 「分かんないです。分かんないですけど……何か大葉(たいよう)に言いたいことが出来たみたいです」 ***  電話している羽理(うり)を残してキッチンへ移動した大葉(たいよう)は、今日一日自宅療養する羽理のため、せっせと弁当を作っていた。  猫柄弁当箱の横に、もうひとつシンプルな容器を並べ置いているのだけれど、自分用ではない。
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