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歩くのもままならない羽理を一人にしておくのは忍びなくて、姉の柚子に羽理の世話を頼もうとメールしたのだ。
まぁ、弁当はそのための賄賂だったのだが。
(昨晩は元気だった羽理が、一晩経ったらズタボロって……絶対なんか言われるな)
そう思いはしたものの、そこはまぁ羽理のため。大葉は甘んじて姉からの非難を受けようと覚悟を決めた。
***
冷凍して持って来ていた作り置きのおかずの中から、甘辛いたれで煮絡めたミートボールを電子レンジへ入れたところで、不意に羽理から声が掛かった。
何故か再度自分に替われと法忍仁子が要求してきているらしい。
生まれたての小鹿みたいにぎこちない様子で立ち上がろうとする羽理を制して彼女のそばまで行くと、通話中のままの携帯電話が差し出された。
今更自分に替わって、何の用があると言うのだろう?
まさか昨夜の情事がバレて、『初心者相手に何してるんですか! ちょっとは手加減して下さい! 部長は発情期のサルですか!』とか何とか責め立てられるのだろうか?
そう思ってゾクッとした大葉だったけれど、別に法忍さんの前で、羽理がヨロヨロとペンギン歩きをして見せたわけではない。
いくら何でも電話で話しただけで、彼女が羽理の不調の理由に勘付いたとは思えなかった。
(羽理もそんなこと話してる素振りはなかった……よ、な?)
女同士がどこまで赤裸々にアレコレ語るのか、大葉には未知の世界だ。
だが、漏れ聞こえていた会話からそんな気配はなかったはずだ。
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