22.朝チュンではないけれど

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 羽理(うり)は休むからいいとして、大葉(たいよう)仁子(じんこ)も仕事なのだ。  上司モードでそれを示唆(しさ)した大葉(たいよう)に、仁子が『わわっ。ホントだ! もうこんな時間!』と慌てて、『すみません! 羽理にはまた改めて話聞かせてもらうって伝えて下さい。では――』と早々と通話から離脱してしまう。 「もぅ、大葉(たいよう)のバカぁ! プロポーズのこと、勝手に仁子に話しちゃうなんて酷いですっ」  大葉(たいよう)が電話を羽理に戻してきたのと同時、羽理(うり)はそんな恨み節を言わずにはいられなかった。 「知らないのか、羽理。仕事でもプライベートでも外堀固めは重要なんだぞ?」  なのに大葉(たいよう)はいっかな悪びれた様子もなくククッと笑うと、余りのことにハクハクと口を開け閉めするしか出来ない羽理を残してキッチンへ戻ってしまった。  身動きのままならない羽理が、恨めし気に呆然と見つめる先、大葉(たいよう)は電子レンジから温めたまま放置していたミートボールを取り出すと、弁当箱に詰めて「よし」とつぶやいた。  どうやら弁当が完成したらしい。 *** 「待たせたな、朝食にしよう」  大葉(たいよう)がトレイに美味しそうなオムライスと湯気のくゆるマグカップを載せてリビングへ戻って来た時、羽理は未だにムゥーッと唇を突き出して拗ねっ子モードのままだった。  それを見て、大葉(たいよう)は(ホント可愛いな、こいつ)と思ったのだけれど、今そんなことを言えば揶揄(からか)っていると余計に怒らせてしまいそうだったので、言わずにおいた。
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