1989人が本棚に入れています
本棚に追加
/442ページ
「な、なんだよ……!」
「別に……」
お互いにムスッとして鏡の前――。
これが大葉の家ならばきっと……今頃足元にキュウリちゃんがテトテトとやって来て、『どうしたんですか?』と言わんばかりにつぶらな瞳で自分たちを見上げてくれているだろう。
そうして、キュウリちゃんを二人して気にしている内に、何となく話せるようになるのだ。
「キュウリちゃんが恋しいです……」
無意識にポツンとつぶやいたら、大葉がハッとしたように「なぁ羽理。それって……」とつぶやいて、期待に満ちた目で羽理を見詰めてくる。
(何故そんなキラキラした目で私を見詰めてきますかね!? さてはキュウリちゃんのつもりですかっ!?)
などと思いつつも戸惑いを隠せない羽理は、キョトンとした顔で大葉を見詰め返したのだけれど。
「あ、いや……、いい」
何をどう納得したのかは分からないけれど、大葉の機嫌はすっかり回復しているみたいだ。
羽理は心の中で(キュウリちゃん効果凄い!)と、ちょっぴりズレたことを考えていた。
***
鏡の前で羽理と二人。
何となく気まずい雰囲気になってしまっていたけれど、それを打開する上手い方法が見出せなくて、大葉は己の不甲斐なさを痛感していたのだけれど。
不意に羽理が「キュウリちゃんが恋しいです……」とかつぶやくから。
(それって、俺の家に住みたいってことだよなっ!?)
と、羽理が聞いたら『何でそうなりますかね!?』と言うであろう斜め上なことを思っていた。
最初のコメントを投稿しよう!