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実は、これからしばらくは羽理の身体の不調を理由に羽理を留め置けるとして、その後どうしたら同棲に持ち込めるだろうか?とか色々考えていた大葉なのだ。
(ここは遠すぎるからな)
車でニ十分の距離は離れ過ぎだと思ってしまうのは、それだけ羽理のことが愛しいからだろうか。
互いに自宅の風呂場に立って、「せーの!」で扉を開けたなら案外すぐに会えるのかも知れないが、そうなったところで〝帰り〟の心配は必ずしなくてはいけない。
それを思うと、この不思議現象は『ドラレもん』に出てくる、行きたい場所を念じて扉を開きさえすればそこへ連れて行ってくれる〝どこだってドア〟ほど便利ではないのだ。
帰りのルートが確保されていない気まぐれさ具合が、いかにも猫神様っぽいな?と思ってしまった大葉だったのが、考えてみれば『ドラレもん』だって猫型ロボット。
(ひょっとして猫神様も案外優秀なのか?)
あわよくば泊まってしまえ!とか……もっと言えば――裸で出会わせてくれている時点で――良からぬ間違いが起きてしまえ!と言う猫神様の思し召しがあった気がして。
(何せあのニヤケ顔のチェシャ猫だからな)
大葉は、実際には見たことのない猫神様の容姿を、昨夜見かけた三毛猫に抱いた怪しげな印象にかこつけて、エッチな神様に違いないと勝手に決めつけた。
(……だが、俺も羽理もアンタの予想に反して身持ちが固かったのは大誤算だっただろ!)
その上でそんな対抗心を燃やした大葉だったのだけれど、『羽理ちゃんはともかく、貴方のはヘタレと言うのでは? ――しかも結局昨夜、彼女を襲いましたよね?』と各方面からツッコミが入りそうなことをつらつらと思ってしまう。
(まぁ、けど……結局はエロ猫神のお陰で良い感じになったわけだし……落ち着いたら羽理と一緒に居間猫神社へお参りに行くか)
大葉は、鏡の前を羽理に譲りながら、最終的にはそう結論付けた。
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