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遣る瀬無い照れ臭さをどう処理していいのか分からないんだろう。
瞳をゆらゆらと彷徨わせながら、どこか確認作業でもするかのように羽理が言うから。
大葉は一瞬グッと言葉に詰まって、「そ、それで! ……俺の中でお前は〝羽理〟だ!」と宣言して。
自分でも『はいそうですね』としか返しようがねぇじゃねぇか!と内心わさわさした。
「あ、はい。私は〝ただの羽理〟で……〝ちゃん〟付けはキュウリちゃんだけ……」
だが、羽理は自分を納得させるように順序立ててそうつぶやくと、「あの……ちょっと慣れるまで照れちゃうかも知れないんですけど……頑張って恥ずかしがらないようにしていきます……ので」と、気を遣ってくれた。
「それに……キュウリちゃんに優しく話しかける大葉、すっごく子煩悩な感じがして嫌いじゃないです」
「羽理……」
「あ! そ、そんな不安そうな顔しなくても大丈夫ですよ!? 大葉は今まで通りキュウリちゃんに〝でちゅ・まちゅ〟で接してあげてください! でないと……その……キュ……ウリちゃん?が戸惑ってしまいそうですもの」
ちょっと気になる語尾が相中に挟まっていた気もするが、この気遣いは大葉のためではなくキュウリのためなのだと言われてしまっては、それ以上が言えなくなってしまった大葉だ。
「あーん、羽理ちゃんってばホント、いい子ぉー! お姉ちゃん、羽理ちゃん、大好きぃー♥」
途端柚子が大葉をドン!と押し退けて、右腕にキュウリを抱いたまま左腕で羽理を抱き締めるから。
「ワン!」
「きゃう!」
恐らくキュウリは驚きの、羽理は痛みからくる声を、ふたり同時に上げた。
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