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「こら、柚子! 羽理が痛がってる! それにっ、そんな抱き方したらウリちゃんも落ちちまうだろ!」
両手に花状態な姉へ、大葉がすぐさま抗議したのだけれど。
「あー、ホントうるさい子ね! 貴方だってさっき羽理ちゃんに同じことして痛がらせてたでしょう! ……けど残念でしたー! もう羽理ちゃんはこの体勢にも慣れて痛くなくなったみたいでーす。それに……キュウリちゃんも私がガッチリホールドしてるから落っこちたりしませんよーだっ!」
ニヒヒッと意地悪く笑って、二人を抱く腕にさらにギュウッと力を込める柚子に、大葉はグッと言葉に詰まったのだけれど。
「あ、あのっ。柚子さんっ、私……」
柚子の腕の中の羽理が、恐る恐ると言った調子で自分を拘束する柚子に声を掛けた。
だが、「ちょっぴり痛いです」と続ける前に、柚子に畳み掛けられてしまう。
「やだぁ、羽理ちゃーん。柚子さんだなんて他人行儀なー! お願いだから柚子お義姉さまって呼んで?」
「えっ?」
「だって羽理ちゃん、うちへお嫁さんに来てくれるんでしょう?」
「当たり前だ! 昨夜プロポーズして、ちゃんと受けてもらえたんだからな!?」
「うそ! 告白すっ飛ばしてプロポーズとか……ホントなの、羽理ちゃん!?」
大葉が懸命に羽理を手元に取り戻そうとするのを、羽理とキュウリを抱いたままキッと睨んで目力だけで牽制しつつ。
柚子がその合間で羽理に問い掛けた。
途端羽理がブワッと頬を赤くして、口に出さずともそうなのだと肯定してしまうから。間近でそれを見ていた大葉も、つられて恥ずかしくなってしまった。
「もぉ、二人とも最高! たいちゃん。可愛い義妹ちゃんのことは私にドォーン!と任せて。貴方はしっかりお仕事頑張って来なさい! ――ほら、羽理ちゃんもたいちゃんに行ってらっしゃい言ってあげて?」
「……い、行ってらっしゃい、大葉」
「お、おう。――行って……来る」
そんなこんなで、大葉は半ば強制的に家から追い出されてしまったのだった。
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