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大葉が経理課・庶務課のある四階フロアに入ると、あちらこちらから「おはようございます」と言う声が掛かった。
それに「ああ、おはよう」と何気なく返しながら、ハッとした大葉だ。
考えてみれば今まで気付いていなかっただけで、こんな風に挨拶をしてくれた面々の中にはきっと羽理もいたんだろうな?と思うと、努めて皆の顔を見て挨拶せねば……と身につまされる気持ちがして。
(俺、……ホントみんなと一線引くような接し方してたんだな)
女性社員らから迫られることに辟易していたからと言って、多くの部下たちとの関わりをシャットアウトするようなことを、同一線上で考えてはいけないはずだったのに。
羽理と風呂で初めて対面した時、羽理は大葉が自社の部長だとすぐ気が付いたのに、自分は目の前の女性が己れの管轄する財務経理課の人間だと気付けなかったのは、つまりはそういうことだったんだろう。
ふと見まわした先、羽理の席の隣に今朝電話で話した相手――法忍仁子の姿を認めた大葉は、周りには分からない程度に彼女にだけアイコンタクトを取った。
社長との用事を済ませたら、約束通り法忍さんには羽理と話す機会を設けてやらねばと思いつつ。
(いや、その前に俺からもちゃんと羽理とのこと、話さねぇとな)
何しろ勢いに任せてプロポーズのことも話してしまったのだ。
そこは倍相岳斗には話していないところだ。
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昨日ですが、スター特典『花粉症デビュー』
https://estar.jp/extra_novels/26222456
をupしました。
例によってくだらないお話(爆)ですが、もしよろしければ❤️
鷹槻
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