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「あ、そう言えば羽理で思い出したんだがな」
倍相岳斗はまだ何か言いたげだったけれど、これ以上突っ込んでアレコレ聞かれると何となく面倒な気がしてしまって。
大葉は半ば無理矢理話題を変えた。
「前に羽理が営業課の領収だけ雨衣課長が取りまとめて持ってくるようキミが指示を出してるのが腑に落ちないって首をひねってたんだがな。――何か事情があるのか?」
土恵商事では泊りがけなどの出張費のように色々な経費が一気にかさむ場合を除いて、日々の業務で生じた交際費や会議費などと言った細々としたものは、上司の承認が降りた時点で使った本人が直接財務経理課へ持って来るのが通常の流れになっているはずだ。
羽理からその話を聞いたとき、大葉は特筆すべき理由に思い当たれなくて……『俺にもよく分からんな。倍相課長に聞いてみるのが一番じゃないか?』と答えたのだが。
まさか羽理に懐いていた営業のワンコ系後輩・五代懇乃介を羽理に会わせないための策略だった……とかじゃねぇよな?とふと思ってしまった。
「ああ、その件でしたら申し訳ありません。僕の私情が多分に混ざってました。――えっと……、大葉さんは営業課の五代懇乃介くんをご存知ですか?」
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