25.土井恵介という男

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*** 「たいちゃんが異例の出世をしたって本当!?」  いつもチャキチャキした印象の柚子(ゆず)が、自分のことみたいに嬉しげに身を乗り出すのを見て、思わず笑みが漏れた恵介(けいすけ)だ。  子供の頃から、すぐ下の末っ子・大葉(たいよう)のことを召使(めしつか)いみたいにこき使って振り回すくせに、弟に何かあるといの一番に駆けつけるのも彼のすぐ上の姉、柚子だった。 「ああ、そうなんだよ」 「……ねぇ、伯父さん、それってもちろん……たいちゃんの実力、よね?」  一歩引いたところから。  身内贔屓(びいき)で色を付けたわけじゃないわよね?と言外に含めてきたのは、常に沈着冷静な印象を与える長女の七味(ななみ)だ。 「僕は仕事に関しては非情だよ? 可愛い(おい)っ子だからって贔屓(ひいき)はしない。だからね、今回のことは言うまでもなくあの子の実力だ」 「そう、良かった……」  恵介の言葉に、やっと七味(ななみ)がほんの少しだけ表情を緩めた。  七味(ななみ)はクールビューティーで、柚子のように感情をあらわにはしないけれど、下手すると柚子以上に一番下の大葉(たいよう)のことを溺愛(できあい)しているのがうかがえる。 「もし、伯父さんが甥っ子可愛さに手を回したりしてたら……あの子、傷つくもの」  結局は弟のため。  そう言い切った七味(ななみ)に、恵介は本当に仲の良い姉妹弟(きょうだい)だなと思って。  目の前の姪っ子たちを交互に見つめた。 (……二人とも凄く美人なんだけど……あんまり果恵(かえ)には似てないんだよね)  見た目も性格も、恵介の最愛の妹であり彼女らの母親でもある果恵に余り似ていない姉妹だ。  どちらかと言えば、二人とも父親の聡志(さとし)()。  聡志も整った顔をしたハンサムだから、彼に似た七味(ななみ)と柚子も相当な別嬪(べっぴん)さんだと思う。  だが、恵介にとって一番美人で可愛くて愛しいのは実妹(いもうと)の果恵に他ならなかったから。  果恵似であるかどうかが、好みの優劣に思い切り影響してしまう。 --------------------- 先日『とり服』が6万スターを達成しました↓。(沢山のご声援ありがとうございます!) https://estar.jp/page/info/congratulations/star/25993212?star=60000 そのお礼に、スター特典をupしましたのでお知らせします。 a66177fe-d06b-44e2-91b5-1f66d49d3132 https://estar.jp/extra_novels/26227356 羽理が大葉のため、料理にチャレンジするお話です。 もし宜しければ♥
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