27.岳斗の告白

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倍相(ばいしょう)課長、ちょっとよろしいですか?』  内線電話が鳴って、部長室に引っ込んだ屋久蓑(やくみの)大葉(たいよう)から呼び出しが掛かったのは、倍相(ばいしょう)岳斗(がくと)がちょうど昔のことに思いを()せていた時のことだった。 「はい。大丈夫です」 『でしたら仕事の切りがいいところで部長室まで来てもらえますか?』  言われて、岳斗は「かしこまりました」と答えながら、受話器を握りしめる手にグッと力を込めた。 *** 「荒木(あらき)羽理(うり)とのことは、しばらく社内では伏せることになった」  部長室へ入るなりすぐ、大葉(たいよう)からそう告げられた岳斗(がくと)は、「えっ?」と間の抜けた声を発した。 「ですがそれだと――」 「まぁ聞け」  大葉(たいよう)に応接セットへの着座を勧められた岳斗は、言いたい言葉を飲み込んで言われた通りにする。 「キミも知っての通り俺は不愛想で通っている。だが……女性の中にはそれでもいいから俺と近付きたいなんて言う奇特な人間もわずかながらいるんだ」  吐息交じりに落とされた大葉(たいよう)からの言葉を聞いて、岳斗は(この人は自分を過小評価し過ぎだな)と思った。 「大葉(たいよう)さんは……貴方が思っている以上に人気があると思いますよ?」  現に、人事課長になっている大葉(たいよう)の同期、那須(なす)みのりなんかは今でも目の前の男にご執心のはずだ。  もっとも、それが高じ過ぎて大葉(たいよう)へのアプローチを無下にされた彼女が逆恨みして、【屋久蓑(やくみの)大葉(たいよう)は男にしか興味がない性癖の持ち主だから、どんな女性が告白してもなびかない】などと言うガセネタを流したのを岳斗は知っている。
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