27.岳斗の告白

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(ま、それに尾ひれを付けて広めたのは僕なんだけど)  ちょっと前までの岳斗(がくと)は、大葉(たいよう)(おとしい)れることに余念がなかったから。  岳斗自身屋久蓑(やくみの)大葉(たいよう)という人間を知れば知るほど、彼に惹かれる人間がいるのは当然だと納得させられたし、それが妙に鼻持ちならなかったのも、ただの嫉妬だったと今なら素直に認められる。  実際、屋久蓑(やくみの)大葉(たいよう)という男は仕事には厳しいし、物言いは素っ気ない。だが、だからと言って決して理不尽なことは言わないし、注意するときにもちゃんとどうすればうまくいくかまで含めて指導してくれる。  叱り方も皆の前で恥をかかせるようなやり方はしないし、部下のミスを知らんぷりすることなんて皆無だ。  もっと言えば、失敗すれば必ず尻ぬぐいしてくれるし、責任だって上司なのだからとちゃんと取ってくれる。  悔しいけれど岳斗は入社以来ずっと、大葉(たいよう)の仕事のやり方を真似て部下たちから慕われてきたのだ。  大葉(たいよう)と違うところがあるとすれば、あえて人当たりを良くしていることくらいか。  それにしたって、大葉(たいよう)からそういう親しみやすさを奪ったのは自分がしてきたことが原因だと岳斗は知っている。  岳斗が入社したばかりの頃。  岳斗の直属の上司だった屋久蓑(やくみの)大葉(たいよう)は、ちょっぴり可愛いところのある感じのいい男だった。
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