27.岳斗の告白

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荒木(あらき)さんと話してるときの大葉(たいよう)さんを見てると、昔の彼を思い出すんですよね)  そうしてこのところの大葉(たいよう)は、荒木(あらき)羽理(うり)と一緒にいる影響か、雰囲気が昔のように柔らかくなってきている。  周りもそれに徐々に気付き始めているようで、大葉(たいよう)の人気はこのところ密かに上がり始めているのだ。  それが落ち着かなくて、岳斗は荒木羽理へのアプローチを焦ってしまったと言えなくもない。  荒木羽理は母子家庭で、何となく自分と似た境遇を持った女性だと言う思いもあったから、岳斗の中では特別な存在だったのだ。  まぁ今となってはそれも妙な執着の仕方だったなと思えるから不思議なのだが。 (僕は荒木さんのことを好きだとか言いながら、実際は彼女の境遇に自分を重ねるばかりで、荒木さん自身のことをちゃんと見られていなかったのかも知れないな)  目の前の屋久蓑(やくみの)大葉(たいよう)よりよっぽど……自分の方が荒木羽理とは接点があったはずだ。なのに、気が付けばポッと出の大葉(たいよう)にあっさりと彼女を()(さら)われてしまっていたのはきっと、そこら辺に敗因があるんだろう。 「社内での女性人気・男性人気ともにナンバーワンのキミからそんなことを言われても説得力ないんだが」 「好かれたい人を落とせない僕の人気なんて、意味がないと思いますけど?」 「それは……キミが本気で羽理と向き合おうとしなかったからだろう?」  さらりと痛いところを突いてくる大葉(たいよう)に、岳斗は「おっしゃる通りです」と吐息を落とした。  そうしてそれを言うならばきっと……今だってそう。  気付かれないよう屋久蓑(やくみの)大葉(たいよう)をちらりと(うかが)い見た岳斗は(いや、何考えてるんだ僕!)と自分の気持ちを否定する。  そもそも岳斗はいたってノーマルなはずなのだ。断じて屋久蓑(やくみの)大葉(たいよう)に恋心なんて抱いていない――と思いたい。
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