28.実家とアルバムと、えこひいきな撮影者

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 にこっと笑う柚子(ゆず)に、「さぁ行きましょう」と背中を押されて、羽理(うり)は何度か座ったことのある大葉(たいよう)の愛車――黒いエキュストレイル――の助手席へ乗り込みながら、ズキンと走った股関節の痛みに「はぅ!」と悲鳴を上げる。  そうしながら、ここまで肩を貸して連れて来てくれた柚子を涙に(うる)んだ目で見上げた。 「……あの、柚子お義姉(ねえ)さま、大葉(たいよう)からの返事は」 「まだよ? ……仕事中だもん。すぐに返信もらえないのは仕方ないわよー」  クスクス笑う柚子に、羽理は「でもそれだと無断借用になるのでは?」と、至極真っ当な問いかけをする。 「そーお? 姉弟(みうち)だからきっと大丈夫だと思うけど……。どうしても羽理ちゃんが気になるって言うなら、ここから実家までは徒歩十五分圏内だし? 歩いていくことも出来るけど……羽理ちゃん、今はそれ、無理っぽいよね?」 「……はい」 「だったら開き直って車で行くしかないわねー?」 「うー」  それは本当のことなので頭を抱えてうなったら、「……ね、羽理ちゃん。たいちゃんの小さい頃の写真見たいでしょう? 実家に行けばきっと……何枚か持ち帰ることも可能よ?」とか柚子が何とも魅力的な悪魔の提案を投げ掛けてくる。  羽理は抗いがたいその誘惑に、気が付けば「行きます!」と答えていた。 「じゃあ善は急げよ? さぁ行きましょう!」  柚子の辞書には、〝待つ〟という言葉は載っていないらしい。
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