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(こんな立派な門があるのって、料亭とか旅館だけだと思ってた!)
門を抜けると、そこから御影石で作られた石畳が真っすぐ伸びていて、その先にいかにも〝由緒正しきお屋敷ござーい♪〟といった風情の重厚な作りの日本家屋が鎮座ましましている。
土地が広いからだろう。大きなその邸宅は、平屋でもたっぷり居住空間を確保しているように見えた。
家自体の大きさにも圧倒された羽理だったけれど、何より驚かされたのは庭の広さだ。
でも――。
「え? ……はた、け?」
目の前に広がる敷地の大半を占めているのは、いわゆる日本庭園と呼ばれるようなものではなくて……。そう、いま羽理が思わずつぶやいてしまったように、一言でいえば〝畑〟だった。
「面白いでしょう? 車で三〇分ほど行ったところには三ヘクタール超えのだだっ広い畑もあるのよ? なのに家までこんなにしちゃって」
ビニールハウスもあるらしい広大な畑の方の経営は、ほぼ土恵商事が担っているのだと説明された羽理は、「え?」とつぶやいた。
「何でうちの会社が?」
「あれ? たいちゃんから聞いてない? うちの両親、総合商社勤務だから……畑にはほぼノータッチなのよ」
父方ではなく、母方のほうのご実家が専業農家らしいのだが、子供が後を継いでくれなかったから家業継続のため外部へ業務委託に出していると言うことかしら?と思った羽理だ。
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