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「ああ! 誰かいると思って気にしてるのね? 大丈夫よ。いま、この家には私たちしかいないから」
大葉の両親は商社勤めという話だったから、恐らくは仕事中なんだろう。
でも、もしかしたら屋久蓑の方のおじい様・おばあ様か、畑をやっておられるという祖父母のお二方がご在宅かな?と思ったのだけれど。
「あの……おじい様やおばあ様がいらっしゃるのでは……」
「ん? ここにはもともとうちの家族しか住んでなかったから……。私たちが巣立った今は両親二人だけよ」
「こ、こんなに広いのにですかっ!?」
柚子の言葉に、羽理は思わず叫ばずにはいられなかった。だってこんな広い家に二人きりとか……寂しすぎるではないか。
「あー。この家無駄に大きいもんね。……けど、大丈夫よ。たいちゃんがしょっちゅう帰って来ておかずとか作り置きしてるはずだし、そんなに寂しくないはずだわ」
「え?」
羽理の驚きの声に、柚子が「たいちゃんらしいでしょ?」とクスクス笑ってから、
「あっ。でも最近はあんまり帰って来てないかしらねー」
そこまで言って、何故か羽理を見詰めて意味深長な笑みを浮かべるのだ。
柚子から向けられた表情の意味が分からなくて、羽理はキョトンとしてしまう。
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