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だからと言って、そのことと先程の柚子の含みを持った笑みの関連性が見出せなくて、羽理がソワソワと柚子を見詰めたら、またしてもクスッと笑われてしまった。
「知っての通りたいちゃんって変なところで不器用じゃない? このところ溺愛されてたはずのキュウリちゃんがちょっぴり蔑ろにされてるのでも分かると思うけど……あの子、今は羽理ちゃんに全振りなのよ」
「へ……?」
靴をそろえて脱いで、柚子に支えられながら上がり框に上がったところでいきなり柚子にギュウッと抱き締められて。
「だからってこんなになるまでシちゃダメよねぇ? 可哀想に……羽理ちゃんボロボロじゃない」
そう耳元で囁かれた羽理は、真っ赤になってすぐそばの柚子を恐る恐る見上げた。
「羽理ちゃん、きっと初めてだったんでしょう? うちの弟がごめんなさいね」
ヨシヨシと頭を撫でられながら、羽理は心の中。
『大葉の馬鹿ぁーっ! 柚子お義姉さまは全てお見通しだったではないですかぁぁぁぁ!』
と、声なき悲鳴を上げた。
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