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「羽理ちゃーん、食べられないものあるー?」
「何でも食べられます! アレルギーもありません!」
「そう。それは幸せなことね?」
「はい、幸せです!」
のほほんとした調子で色々聞いてくる美魔女の問い掛けに応じながら、羽理は内心ざわざわして落ち着かない。
(何でこんなことになってるのー?)
本当なら大葉との電話を切った後、羽理はすぐにでも柚子に自宅まで送り届けてもらうつもりだったのだ。
(今頃お風呂上がりのイチゴミルクを飲みながら、Web小説にモヤモヤをぶつけてる予定だったのよぅ!)
大葉が仕事をしている間に入浴を済ませて、〝猫神様のお導き〟もシャットアウトした状態で、このどうしようもない気持ちをバネに、小説を書くつもりだった。
なのにお暇しようとした矢先、多忙なはずの屋久蓑果恵が帰宅してきて、庭先――例の家庭菜園が見える辺り――で鉢合わせしてしまったのは一体何の因果だろう?
一瞬柚子お義姉さまの仕業かと疑った羽理だったけれど、柚子も驚いた顔をしていたので、彼女が呼び寄せたわけでもないらしい。
でも――。
「ふふっ。そう、貴女がたいちゃんのぉー♪ やーん、話に聞いてたより断然可愛いじゃなーい! あ。私、屋久蓑果恵。そこにいる柚子と、大葉、それからもう一人しっかり者の娘の母親なんてやらせてもらってるわ。よろしくね。――えっと、羽理ちゃんだっけ? せっかく会えたんですもの。夕飯でも食べながらお話しましょう?」
「え、え、あのっ、私……」
本当はプンスカして帰路に就くところだったはずなのに、すっかり果恵のペースに巻き込まれた羽理は、果恵にギュッと腕を掴まれながら「あ、あの、柚子お義姉さま……!」と、すぐ横に立つ柚子へ助けを求めたのだけれど――。
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