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「ごめんね、羽理ちゃん。実はトイレへ行ったときにこっそり」
そこで申し訳なさそうに一呼吸置くと、「だって……私のせいで羽理ちゃんとたいちゃんが喧嘩しちゃったから」と眉根を寄せる。確かに羽理が怒りと悲しみでほろほろと泣きながら自宅へ連れ帰って欲しいと頼んだとき、柚子は「分かった。けどごめんね。先にトイレへ行かせてね」とちょっとだけ羽理の傍を離れた。きっとあの時のことを言っているんだろう。
その後も片付けをするとか何とか言われて結構待たされたのだけれど、今思えばあれも計画的な時間稼ぎだったのかも知れない。
「嘘……」
それにしたってトイレ自体にはそんなに時間を掛けてはいなかったはずなのに……と思いながらちょっぴり非難がましく羽理がつぶやいたと同時、電子レンジが温め終了の音楽を鳴らして、柚子はそちらへ向き直ってしまった。
それで、羽理はそれ以上柚子にそのことを問いただせなかったのだけれど――。
「ねぇ、羽理ちゃん。うちの子とどんな理由で喧嘩してるのか……聞いてもいい?」
代わりとでも言わんばかりにこちらの様子を窺うみたいに果恵が話に入ってきて、羽理は何だかとっても気まずくなってうつむいた。
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