2209人が本棚に入れています
本棚に追加
どうやら果恵、各方面から羽理の引き留めは頼まれたものの、その経緯までは詳しく聞かされていないらしい。
羽理は気遣うような眼差しで自分を見つめてくる果恵を見て、正直戸惑った。
そもそも羽理が一方的にプンスカしているだけで、喧嘩ではない。
それに、例え話したとしてもきっとまた、『大葉は羽理が不安に感じるようなことをする子じゃない』と言われるのが落ちなのだ。
羽理だってそんなことは分かっている。分かっているけれど……心が納得しないのだから仕方がないではないか。
「たいちゃんがね、恵介伯父さんからお見合いを打診されてたのを羽理ちゃんに伝えてなかったの」
黙り込んでしまった羽理を見かねたんだろう。「あちち……」と言いながら電子レンジから温めたものを取り出した柚子が端的にそう説明して、それを聞いた果恵が「まぁ!」と口に手を当てて瞳を見開いた。
(どうせまた、大葉が庇われて、私の気持ちはおざなりになっちゃうんだ)
そう思ってしゅんとした羽理だったのだけれど――。
最初のコメントを投稿しよう!