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(昨夜のあれは一体なんだったの!)
羽理は今まで雲上の人だと思っていた屋久蓑大葉をグッと身近な存在として自分のすぐそばまで引きずり降ろしてきた風呂後の一件について、一人デスクでむむーんと頭を悩ませていた。
だって、そのせいで――。
「荒木さん。おーい、荒木さーん、聞こえてる!?」
「羽理、倍相課長に呼ばれてるよっ」
机上に無造作に置かれたスマートフォンの真っ暗な画面をぼんやり眺めていたら、ちょんちょんとすぐ横に座る法忍仁子に肩をつつかれた。
「ふぇっ!?」
いきなり推しの名前を告げられた羽理はビクッと身体を震わせて変な声を出して、仁子にキョトンとされてしまう。
「大丈夫? 荒木さんがぼんやりしてるなんて珍しいね」
慌てて課長の元へ駆けつけたら、倍相岳斗は羽理を叱ってきたりせず、逆に心配してくれた。
というのも羽理、プライベートではぶっ飛んだところばかりが目立つけれど、仕事には毎日真摯に取り組む真面目社員。
ゆるふわなミディアムロングのミルクティーベージュ色の髪の毛は、オフィスにいる今は作業の邪魔にならないように両サイドを編み込んで、後ろでキュッとひとつにまとめてあるし、服装も今日は控えめな色調のサーモンピンクのパフスリーブブラウスにくすんだ黃みの赤のくるぶし丈のテーパードパンツ姿という、女性らしいけれど機能性も兼ね備えたオフィスカジュアル。
暑い夏でも露出度は控えめ。割と清楚に見えるものをコンセプトに毎日コーディネートを決めるよう心掛けているのだ。
家では髪も基本ゆるっとサイドアップにしていることが多いし、服装も頓着しない羽理だけれど、仕事となると話は別。
キチッとした外観を意識することで、気持ちを切り替えていた。
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