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羽理が今までの人生において唯一お付き合いしたことがあるただ一人の彼氏には、もしも赤ちゃんが出来てしまったら、今の私たちには育ててあげられないから。
そう話して大学を卒業するまでエッチは待って?とお願いした。
彼は吐息を落としながらも、うなずいてくれたのだけれど――。
(私の考え方が古すぎたの?)
昨今の恋愛モノの流行りのひとつに、シークレットベビーものというのがある。
それは、予期せぬ妊娠出産を経験したヒロインが、父親である男性に内緒で子供を産み育てるのだけれど、やがてはその子供ごと丸っとヒーローに愛される……という作品群のことだ。
羽理は、ティーンズラブは自身も小説を創作してしまうほどに大好きだったけれど、自分が母子家庭で私生児として育ったからか、どうにもそのジャンルだけは馴染めなくて。
絵空事の中だけならまだしも、現実でそんなことになったら困るという思いが人一倍強いのだ。
それが、同級生――羽理と同じ学生――であるにも関わらず、羽理の身体を求めてくる彼氏に待ったを掛け続けた理由だったのだけれど。
まさかそのせいで浮気されるだなんて、羽理は微塵も思わなかった。
なのに――。
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