30.心配しなくていいと伝えたいだけなのに

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 ここへ来た時はあんなに身体中痛かったはずなのに、色々考えていたのが功を奏したんだろうか? 果恵(かえ)と出会ってからこちら、羽理(うり)は存外痛みを感じずスムーズに動けていることに、自分自身気付けていない。  柚子(ゆず)や果恵がそばにいてくれるという安心感も手伝って、羽理は大葉(たいよう)に真意を問い(ただ)してみようと前向きになっていたのだけれど――。  近付くにつれて、大葉(たいよう)の陰になっていて見えなかったもう一人の存在に気が付いた。  羽理が自分たちの手を離れたことで、柚子と果恵は後方で見守ることにしたらしく、大葉(たいよう)の身体で死角になっているその人物が見えていないみたいだ。 (誰……?)  羽理がそう思ったのと同時。 「たいくん。土井さん――貴方の伯父さんが言ってたの。私、貴方の好みのタイプだって。土井さんも乗り気だったって。だったら何で私、お見合いを断られたの? 散々待たされた挙句、たいくんからは何も言ってくれなくて……土井さんから電話が掛かってくるだけとか、酷すぎるよ! 私、たいくんに会えるの、ずっと楽しみにしてたんだよ!?」  悲痛な女性の声が聞こえてきて、大葉(たいよう)の腰に回されたその人の腕に力が込められたのを()の当たりにした羽理は、ヒュッと息を詰めた。
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