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ここへ来た時はあんなに身体中痛かったはずなのに、色々考えていたのが功を奏したんだろうか? 果恵と出会ってからこちら、羽理は存外痛みを感じずスムーズに動けていることに、自分自身気付けていない。
柚子や果恵がそばにいてくれるという安心感も手伝って、羽理は大葉に真意を問い質してみようと前向きになっていたのだけれど――。
近付くにつれて、大葉の陰になっていて見えなかったもう一人の存在に気が付いた。
羽理が自分たちの手を離れたことで、柚子と果恵は後方で見守ることにしたらしく、大葉の身体で死角になっているその人物が見えていないみたいだ。
(誰……?)
羽理がそう思ったのと同時。
「たいくん。土井さん――貴方の伯父さんが言ってたの。私、貴方の好みのタイプだって。土井さんも乗り気だったって。だったら何で私、お見合いを断られたの? 散々待たされた挙句、たいくんからは何も言ってくれなくて……土井さんから電話が掛かってくるだけとか、酷すぎるよ! 私、たいくんに会えるの、ずっと楽しみにしてたんだよ!?」
悲痛な女性の声が聞こえてきて、大葉の腰に回されたその人の腕に力が込められたのを目の当たりにした羽理は、ヒュッと息を詰めた。
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