1974人が本棚に入れています
本棚に追加
/434ページ
「本当……?」
そんな、愛しくてたまらない羽理にうるんとした瞳で見詰められた大葉は、「当たり前だろ」と即答した。
「見合いの話をしていなかったのも、隠そうとして黙ってたわけじゃねぇよ。うちの社長が俺の身内だってお前が知ってると思わなかったから……ただ単に要らん心配を掛けたくなかっただけだ。黙って見合いして、あわよくば羽理と見合い相手とに二股掛けてやろうとか……そんな七面倒くさいことは思ってねぇから」
じっと真摯なまなざしで羽理を見下ろせば、ややして大葉の言葉に羽理がこくんと素直にうなずいてくれる。その愛らしい仕草にどうしても我慢出来なくなった大葉は、羽理の頭頂部に吸い寄せられるように唇を押し当てて「ホント可愛いな……」とつぶやかずにはいられなかった。
脈絡のない大葉からの言動に、羽理がソワソワと戸惑うのを見下ろしながら、大葉は実家へたどり着くまでの道すがら、羽理に告げねばと思っていたことを全部言おう! と思う。
「もともと見合い話自体、きてすぐ必要ないって突っぱねてたんだ。それを伯父がどうしてもって引き下がらなくて書類を押し付けられてたんだけどな。忙しさにかまけて机ん中に放りっぱなしになってた。けど――」
「けど?」
「羽理にプロポーズしてOKもらえて……その、……だ、……」
「だ……?」
最初のコメントを投稿しよう!