30.心配しなくていいと伝えたいだけなのに

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「本当……?」  そんな、愛しくてたまらない羽理(うり)にうるんとした瞳で見詰められた大葉(たいよう)は、「当たり前だろ」と即答した。 「見合いの話をしていなかったのも、隠そうとして黙ってたわけじゃねぇよ。うちの社長が俺の身内だってお前が知ってると思わなかったから……ただ単に要らん心配を掛けたくなかっただけだ。黙って見合いして、あわよくば羽理と見合い相手とに二股掛けてやろうとか……そんな七面倒(しちめんどう)くさいことは思ってねぇから」  じっと真摯(しんし)なまなざしで羽理を見下ろせば、ややして大葉(たいよう)の言葉に羽理がこくんと素直にうなずいてくれる。その愛らしい仕草にどうしても我慢出来なくなった大葉(たいよう)は、羽理の頭頂部に吸い寄せられるように唇を押し当てて「ホント可愛いな……」とつぶやかずにはいられなかった。  脈絡のない大葉(たいよう)からの言動に、羽理がソワソワと戸惑うのを見下ろしながら、大葉(たいよう)実家(ここ)へたどり着くまでの道すがら、羽理に告げねばと思っていたことを全部言おう! と思う。 「もともと見合い話自体、きてすぐ必要ないって突っぱねてたんだ。それを伯父がどうしてもって引き下がらなくて書類を押し付けられてたんだけどな。忙しさにかまけて机ん中に放りっぱなしになってた。けど――」 「けど?」 「羽理にプロポーズしてOKもらえて……その、……だ、……」 「だ……?」
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