31.メッセージ

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「その時はまた、色々相談に乗って下さいね? 今日も凄くためになるお話ばかりで私、目からうろこでした」  ニコッと笑いながらそう告げてきた杏子(あんず)は、残念ながら岳斗(がくと)のことを認識してくれているようには思えなかった。  そこがちょっぴり不満な岳斗だったけれど、思えば屋久蓑(やくみの)大葉(たいよう)を好きになる女性は、きっとみんなこんな感じ。向けられる好意に(うと)くて手強(てごわ)いに違いない。 (荒木(あらき)さんにしてもそうだったし……きっと杏子ちゃんも相当鈍感な子だ……)  異性から個人的に食事やお茶に誘われて、下心を感じない子は珍しいと思う。  現に、岳斗が食事に誘えば、大抵の女性は岳斗がその先を望んでいることを察知してすり寄ってきたものだ。  だからこそ、羽理の時と同じ(てつ)を踏むつもりはさらさらない岳斗(がくと)である。 (今度こそまどろっこしい真似はしないで、直球で勝負しよう)  杏子と別れてすぐ、大葉(たいよう)に意味深なメッセージを送ったのだって、実はライバル(?)に対する〝牽制(けんせい)〟のつもりだった。  何せ、杏子(あんず)荒木(あらき)羽理(うり)は家が近過ぎる。もしものことが起こってからでは遅いのだ。  ――貴方が手放した女の子、僕が頂きますので、もう手出しはしないでくださいね?  腹黒っぽさを発動させて、大葉(たいよう)にそんなことをしてしまったのは、自分に自信が持てないからに他ならない。  大葉(たいよう)が荒木羽理以外の女性に見向きもしないことは承知の上で、それでも下手なことをして杏子ちゃんの心をかき乱すような真似だけはしないで欲しいと、岳斗は心の底から(こいねが)ってしまったのだ。 efa4fbf8-eae5-4a05-b809-39f8f91e886e  さて、牽制を掛けた屋久蓑(やくみの)大葉(たいよう)から岳斗(がくと)に電話が掛かってきたのは、杏子をアパートのまで送り届けた後。――岳斗が、「さて、帰るか」と少し離れたコインパーキングに駐車してあった車に乗り込んだときのことだった。
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