32.嫌だから、嫌なんです!

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「分かった。色々善処する……。その……お前も頑張れよ?」  岳斗(がくと)からの意味深長なメッセージを受けて、マンションへ戻るなり大葉(たいよう)羽理(うり)のすぐそば。岳斗に「あれはどういう意味だ?」と電話をかけたのだが。  切なげに小さく吐息を落とした岳斗から『僕、一目見て彼女のことを好きになちゃったんです』という告白とともに杏子(あんず)との出会いの経緯(いきさつ)や、そうする中で彼女が大葉(たいよう)と見合いする予定の女性だったのだと気付いたことなど、一連の成り行きを聞かされた。  偶然と呼ぶには余りに数奇な二人の出会いに、電話を切るなり「マジか……」とつぶやかずにはいられなかった大葉(たいよう)である。 (普通そんなこと有り得ねぇだろ)  大葉(たいよう)の見合い相手だった杏子と、自分の部下である倍相(ばいしょう)岳斗(がくと)が出会うだなんてこと――。 「大葉(たいよう)……?」  羽理(うり)がキュウリを抱っこした状態で、不安そうにそんな自分を見詰めてくるから。  大葉(たいよう)は一度落ち着こうと深呼吸をした。 「……羽理、アイスコーヒー飲むか?」  そうして気を取り直すように羽理へそう問いかけたら、唐突な話題変更に「え?」と聞き返されて、大葉(たいよう)は心の中『そりゃそうだよな』と思った。 「あー、すまん。ちょっと頭ん中整理出来てなくてな。コーヒー()れながらお前にうまく話せるよう順序立てたいんだ。――いいか?」  素直に胸の内を吐露したら、羽理がこくんとうなずいてくれる。大葉(たいよう)は、羽理のそういう素直なところが大好きだとしみじみと実感した。 「ミルクたっぷりのコーヒー牛乳でいいよな?」 「あ、はい」 「砂糖はどうする?」 「えっと……ご飯を一杯食べた後なので、今回は無しでお願いします」 「了解」
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