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倍相課長との電話を終えた大葉は、明らかに何かを思い悩んでいるような感じで、羽理はとっても落ち着かなかったのだ。
やたらと〝たまたま〟のところに力がこもっていたのも気になった。
(私、杏子さん絡みでの隠し事はもう懲り懲りだよ……?)
そう思っていた矢先、いきなり大葉から同棲の打診をされた羽理は、回りくどい言い方はしないでストレートに大葉へぶつかることにした。
「――さっきの電話、倍相課長から何を言われたんですか?」
そう問いかけた羽理を後押しするようにキュウリちゃんが「アン!」と加勢してくれて。それに勇気づけられた羽理は大葉をじっと見詰めた。
女性陣ふたり(?)からの視線を受けた大葉は、孤立無援、多勢に無勢。どうすべきかとオロオロと視線をさまよわせているようだったけれど、どうやら観念したらしい。
「さっき……」
ややしてポツポツと語り始めた。
***
基本仕事は出来るけれど日常生活ではぽやんとしている印象の羽理が、そんな鋭いことを言うなんて、大葉には全くの想定外だった。
大葉は羽理の言葉に一瞬たじろいで、けれどすぐさま彼女に隠し事をしてもいい結果にならないことは立証済みだったじゃないかと考えを改めた。
そもそも杏子が自分のアパート近くに住んでいると知れば、羽理だってきっと心穏やかじゃいられないはず。
大葉は、ちゃんと話した方が羽理に同棲を決意してもらういい判断材料になるんじゃないかと今更のように気が付いた。
「さっき……岳斗が杏子とたまたま出会ったって言ったよな? ――あれ、お前ん家の近くの神社で、って話だったんだ」
「近くのって……もしかして居間猫神社?」
「ああ」
どうしてそんなところに倍相岳斗がいたのかも含めて説明をしたら、羽理が自分に言い聞かせるように「居間猫神社……」とつぶやいた。
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