32.嫌だから、嫌なんです!

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「何が僕にぴったりのお守りだよ……」  いい加減なおばあさんだな……と苦笑まじりにつぶやいて、チョンッと目の前の黒猫をつつく。  自分には不必要だと思うけれど、お守りだと思うと何となく粗末に出来なくて……かと言って未婚の自分が持ち歩くには明らかに適さないそれを持て余した結果、とりあえずということで車にぶら下げていたのだ。 (せめて交通安全……。いや、縁結びだったら良かったのに……)  もちろん杏子(あんず)早急(さっきゅう)に仲良くなりたいけれど、既成事実で絡め取りたいわけではない。  自身が婚外子として生まれた過去を持つ岳斗(がくと)としては、その辺りは慎重にいきたいと思っているし、正直(ぶっちゃけ)子供は欲しくないとすら思っている。  そういえば居間猫(いまねこ)神社で杏子と出会ったと話したとき、大葉(たいよう)から『もしかして……どちらかがその神社のお守りを持ってたりしねぇか?』と聞かれたけれど、目の前の子宝祈願には〝居間猫神社〟のロゴは入っていなかったし、そもそも子宝は関係ないだろうと思って、「少なくとも僕は持ってませんよ?」と答えたのだけれど。  今思えば何故わざわざそんなことを問われたのだろう? と気になってしまった。 (今度杏子ちゃんに「あそこの神社のお守り持ってる?」って聞いてみようかな?)  そう思いながら目の前のお腹のぽってり膨らんだ猫をチョンとつついたら、どこからともなく「ニャー」と猫の声が聞えた……気がした。
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