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大葉から「ベッドへ行こうか」と誘われて、羽理は心の中でひゃーと叫んだ。
「あ、あのっ、私っ……明日も仕事ですし……その、まだ――」
(足を広げると痛いんです)
……なんてこと、恥ずかしくて言えるわけがない。
だが、さすが年の功というべきか。大葉は羽理が皆まで言わなくても察してくれたらしい。
「大丈夫だ、羽理。痛いことはしないから……。――お願い?」
ギュッと抱き締められたまま、耳元。大好きな低音イケボで甘くそんな風におねだりされたら、身体がゾワリと震えて蕩けてしまうではないか。
大葉の吐息が耳朶を掠めた途端、カクン……と腰が抜けたみたいに足に力が入らなくなって、彼に身をゆだねる形になってしまった羽理は、腰の辺りを大葉に支えられながら、『これじゃー大葉の思うつぼだよぅ』とソワソワした。
案の定、大葉はこの機を逃すつもりはないらしい。
当たり前のように役立たずになってしまったひざ裏に腕を差し込まれて、横抱きに抱え上げられてしまう。
頼みの綱のキュウリちゃんも、飼い主の恋路を邪魔する気はさらさらないみたいで、大人しくスッと下がってお座りをしてしまった。
「キュウリちゃん……」
裏切者ぉーと思いながら助けを求めるみたいに大葉の愛犬の名を呼べば、『なんですか?』と問いたげな表情で小首を傾げられる。
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