34.次はお前の親御さんだと思うんだ

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「せめて……週末限定でお願いしますっ」  真っ赤になってモニョモニョ言う羽理(うり)が可愛くて、もっといじめてやりたくなってしまう。それでわざとらしく「それだとカロリー消費が追い付きませんよ?」と追い打ちを掛けたら、羽理が泣きそうに情けない顔で大葉(たいよう)を見詰めてきて。その表情の余りの愛おしさに、大葉(たいよう)は心の底から幸せだ! と実感させられた。 「で、冗談はさておき、さっきの話なんだがな」  何だかんだで中途半端に頓挫(とんざ)してしまった羽理の実家訪問に話を戻せば、羽理がパンを切る手を止めて大葉(たいよう)を見詰めてきた。 「うち、元々父親不在の母子家庭なんですけど……その、問題ありませんか?」  自分が婚外子なことを気にしているんだろう。今更なことを言って不安そうに瞳を揺らせる羽理に、大葉(たいよう)はナイフとフォークを皿に置いて羽理を真正面から見据えた。 「俺としちゃあ、挨拶出来るお母様がご健在なだけで有難ぇんだけど?」  世の中には家族との縁に恵まれない人間なんてざらにいるのだ。  たまたま大葉(たいよう)には両親や姉達(きょうだい)、それから祖父母らやお節介な伯父に至るまで皆健在で、尚且つやたらと密な関係を築いているけれど、そうじゃない人だっていて当然だと心得ている。 「羽理はおふくろさんとの仲……」 「悪くないと思います」  おじい様はもう鬼籍に入ってしまっているらしいのだが、それを機におばあ様と同居を始めた羽理の母親は、ペットOKな住まいに移り住めたのをいいことに、猫を飼い始めたのだとか。 「実家に帰るたび、毛皮の猫吸いしまくってます」 「毛皮の猫吸い?」  頓珍漢なワードに大葉(たいよう)が首を(かし)げたら、 「あ、『毛皮』は猫の名前なんですけどね……その子のお腹とかに顔を埋めてスンスンにおいを嗅ぐんです」  羽理が嬉しそうに説明をしてくれた。
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