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「……おい、荒木?」
急に押し黙ってしまった羽理へ、屋久蓑部長が怪訝そうな顔をしてくるから、羽理は完璧にテンパってしまった。
「え、えっと……ビッグマグナムの構想を練ったりするのに夢中だからです!」
それで思わず要らないことを口走って、屋久蓑部長に「は? ビッグマグナム? 何だそれは。俺にも分かるように話せ」と言われてしまう。
「や、屋久蓑部長には関係ありません! 趣味の話ですのでっ」
苦し紛れにそう言ってから、羽理は最初から『帰宅後に趣味の時間を取っているので』と言葉を濁しておけばよかったと気が付いた。
でも、何と言うか……割と具体的に脳内の一部を口走ってしまった手前、逃げ切れそうにない雰囲気が漂って。
「なぁ、荒木よ。全く関係ないという気がしないのは何故だろうな? 趣味とは言え、やましくないなら俺にもちゃんと話せるんじゃないのか? ん?」
この辺はやはり部長様と言うべきか。
一度疑問に思ったことは、部下の口からとことん突き詰めて聞きださずにはいられないという雰囲気を醸し出していらっしゃるから。
羽理は思わず「ひっ」と引きつった声を出して、ますます屋久蓑部長に距離を詰められてしまう。
(そんな出来る上司のスキル、今は必要ありませんよっ⁉︎)
結局、羽理は趣味で小説を書いていることを屋久蓑部長にポツポツと支障のない範囲で(?)語ったのだった。
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