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(しっかり親御さんたちに結婚の意志表示をして、羽理を安心させてやらねぇと)
大葉がそう決意したところで、ちょうど毛取り作業が済んだ。
「綺麗になったよ」
最後までコロコロで任務を完遂した羽理に、乃子はちょっぴり不満そうだったが、大葉としては毛が取れれば何でも良かったし、そもそも羽理が自分のために何かをしてくれたというのが嬉しかった。
「サンキューな」
すっかり綺麗になったスーツを見下ろして、大葉は所在なく手にしたままだった手土産の持ち手をギュッと握り直す。そうして、「荒木さん」と呼び掛けてエチケットブラシを手にしたままの乃子へ向き直ったのだけれど。
それに被せるように、
「あ、わし、屋久蓑さんに名乗り忘れちょったわ」
羽理から受け取ったコロコロを棚に仕舞い終わったおばあさんが戻ってきて、大葉の出鼻をくじく。
「あー、まぁ散々話しまくっちょって今更じゃて思うかも知れんが……わし、羽理の祖母の〝荒木初〟と言います」
「あ……。や、屋久蓑大葉です」
初が名乗るのが今更ならば、自分が再度名を告げるのも同じだな……と思いながらも、つい流れで言わずにいられない。
「もうお母さん! 今いいところだったのにぃー!」
乃子がそんな母親にダメ出しをしたのだけれど、初は「いや、ええところなら尚更みんなが揃ぉてからじゃろ。わしを仲間外れにするとか有り得んけぇ」と一向に意に介した風がない。
まぁ、彼女の言うことも一理あると思った大葉は、ふぅっと小さく吐息を落とすと気を取り直して『あんころポーネ最中』の袋を乃子へ差し出した。
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【お知らせ】
名付け裏話に初おばあちゃんを追加しました。
https://estar.jp/novels/26128094/viewer?page=14
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