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「これ……。遅くなりましたが、美味しいと評判の最中が入っています。皆さんで召し上がられてください」
「まぁまぁご丁寧に」
ソワソワと横長な紙袋を受け取った乃子に、初がすかさず「何個入りかの?」と問い掛けてくる。
「おばあちゃん!」
羽理がさすがに真っ赤になって自由人な祖母をたしなめたのだけれど。
「十個入りです」
大葉が答えたら、羽理が「えっ!?」と瞳を見開いた。
「何だ」
大葉がそんな羽理へ視線を移すと、「うちのは五個しか入ってなかったです!」とか。
(オイ待て! 何故今それを抗議する!?)
と思ってしまった大葉である。
そもそも家用のはここへの手土産のオマケみたいなものなのだ。本来ならなくても不思議ではなかったのに。
大葉が困り顔で「あー、気に入ったんならまた買ってやるから」と言ったら、羽理が「約束ですよ!?」と小指を差し出してきた。
大葉は思わずその指に小指を絡めて指切りげんまんをさせられたのだけれど。
そのやり取りに乃子がクスクス笑って、初が「りっちゃんもわしのこと言われんのぅ……」とニヤリとしたのも仕方ないだろう。
そんなやり取りを横目に、大葉は溜め息混じり。羽理は母親似というより祖母似だな……と思った。
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