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「俺、引っ越そうと思ってるんだ」
「えっ!?」
羽理の実家で一世一代の大仕事を終えた大葉は、羽理の引っ越しを前に兼ねてより考えていたことを口にした。
だが、羽理としては当然のことながら青天の霹靂。
「そんな話、聞いてません!」
と眉根を寄せた。
「ああ、まだ話してなかったからな。――けど、ここ、ウリちゃんと俺とお前、三人で住むには手狭だと思わねぇか?」
吐息交じり。足元で愛らしい瞳で自分を見上げているキュウリに視線を転じると、大葉はそっと彼女を抱き上げた。
「でも……」
羽理が何か言おうとするのを視線だけで制すると、大葉は言葉を続ける。
「そもそも八畳しかねぇリビングダイニングの一角をウリちゃんのケージがドーンと占拠してる。……寝室だってベッドだけでほぼスペース食ってるだろ? そんな状態で……お前、どこで趣味の執筆活動をするつもりだ?」
大葉としては何の気なし。羽理の家に行ったとき小さな部屋の片隅にパソコンデスクが置かれていて、羽理が〝書くこと〟を自分の中で大切なモノとして捉えているように思えたから配慮してみただけだったのだが。
〝執筆〟というワードを出した途端、羽理が「ひっ」と悲鳴を上げてオロオロと大葉を見詰めてきた。
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