5.俺はただ、風呂に入る時間がかち合うのが嫌なだけ

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「はぁーい♥ 楽しく飲んれますよぉ~? 悪いれしゅかぁ?」 「えー。誰と、ってぇ? ……ふふふっ。内緒れすぅ~」  とか。  まるで気心の知れた友人か、ラブラブな恋人との会話のように展開する羽理(うり)の声と、電話から時折漏れ聞こえてくるイケメンボイスに仁子(じんこ)は一人、(裸男って誰!?)と疑問を深めていた。  羽理の電話が終わるのを見計らった仁子は、「ちょっとぉ、羽理、裸男って誰なのよぅ?」と、酒の勢いを借りて問うてみたのだけれど。  羽理はニマニマして「いちゅも(はらか)でいる男の人のことらよー? チラッとしか見たことないけろぉ~、めっちゃご立派しゃんなのぉー♥」と、こちらも酔った勢いのままとんでもない説明をする。  もしこの場に屋久蓑(やくみの)大葉(たいよう)がいたならばきっと、「誤解を招くような発言をするな、痴女!」とこれまた話をややこしくしていたことだろう。 「いつも裸って……。何それ、何それ! 羽理ぃー、アンタいつの間に彼氏(かれり)出来(れき)たのよぅ!?」  だが、酔っぱらい仁子は諸々(もろもろ)肝心なところを突っ込まずにそこへ集約して。  目の前でそんな二人のやり取りを無言で見詰める倍相(ばいしょう)岳斗(がくと)が、仁子の質問にピクッと反応したのだが、二人とも気付かなかった。 「彼氏(かれり)なわけないじゃぁーん。ただ(はらか)でいたらけらもん」 「何それー。どういうシチュエーション!」 「分かんなぁーい」  キャハハッと羽理が笑って、「そうか、そうかぁ。分かんないなら仕方(しから)ないかぁ~」と仁子がつられて笑う。
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