6.気になって仕方がない

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「なぁ荒木(あらき)。一応聞いてみるんだが……。お前、風呂は自力で入れそうか?」  荒木(あらき)羽理(うり)のアパートに着いてはみたものの、そのまま建物前で「じゃあな」と言う気になれず、彼女の腕を支えて一緒にエレベーターへ乗り込んだ大葉(たいよう)だ。  部屋の前まで来てモタモタと鍵を探す荒木に()れながら問い掛けてみたら、酒で潤んだ熱っぽい瞳を向けられてドキッとしてしまう。 「ふぇ~? お風呂(ふりょ)れしゅかぁ? 大丈夫(らいじょぉぶ)れす。でササッとすませましゅのれ」  しゃわぁ、と言うのはシャワーのことだろうかとふと考えて。  本人はその気なんてないだろうが、余りに色っぽい視線に当てられそうで、思わず顔を逸らしつつも、 「立ちっぱなしで湯なんか浴びて、ふらついて転倒したらどうするんだ!」  などと、大葉(たいよう)はまたしても母親めいたことを言ってしまった。  かといって、温かいお湯を張って湯船に浸かったら、そのままブクブクと沈んでしまいかねないとも思ってしまう。 「あー、けどっ。風呂へ浸かるのもなしだ! 危なすぎる!」 「ふふっ。屋久蓑(やくみにょ)部長(ぶちょぉ)ってばホント心配性さんれしゅねー。良いになれしょうれしゅ♥」  腕の中でフラフラと揺れながら荒木がヘラリと微笑むのを見て、大葉(たいよう)は半ば無意識。(いや、妻になるのはお前だろ。俺は夫になりたい!)と思ってしまってから、「妻」「夫」と言う単語が妙に恥ずかしくなった。
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